栄養Topics【免疫系が腸内細菌を維持する新たなメカニズムを発見】

2019年01月09日(水)

 

【免疫系が腸内細菌を維持する新たなメカニズムを発見】

 

理化学研究所は、免疫グロブリンA(IgA)が腸内細菌叢を制御するための新たなメカニズムを明らかにしました。

 

これまでの研究により、免疫グロブリンA (IgA)は腸内で常在細菌の表面をコートしていることが知られていました。
また、このコーティングには、通常の抗体-病原菌の結合様式とは異なり、糖鎖を介する場合があることが指摘されています。

 

そこで、研究チームは細菌成分を認識しない単クローンIgA(7-6IgA)を作製し、強い糖鎖修飾を受けたIgAと細菌間の相互作用を詳しく解析。
その結果、卵白を構成する主要なタンパク質であるオボアルブミン(OVA)を認識する7-6IgAが、ヒトの主要な腸内細菌であるBacteroides thetaiotaomicron(B.theta)と糖鎖を介して結合することを発見。
また、7-6IgAは大腸粘液の中でB.thetaの機能未知遺伝子の発現を誘導することもわかり、この遺伝子由来のタンパク質を「粘液関連機能因子(Mucus-Associated Functional Factor;MAFF)」と名付けて、さらに詳しく解析しました。

 

すると、B.thetaはMAFFの働きを介して、Firmicutes門に属する他の細菌種と相互作用し、腸内細菌叢全体の構成や代謝機能を変化させることが判明。
さらに、マウスの腸炎モデルを用いた実験では、B.thetaを定着させなかったマウスとMAFFオペロンを欠損したB.theta株を定着させたマウスが激しい腸炎を発症したのに対し、野生型のB.thetaを定着させたマウスでは腸炎発症に強い抵抗性を示しました。

 

これにより、MAFFが炎症性腸疾患の発症を予防する機能を持つことが明らかになりました。

 

これらの研究を積み重ねることが、炎症性腸疾患の新たな予防法・治療法の開発に繋がるものと期待されます。

 

■詳しくは下記サイトへ
http://jem.rupress.org/content/215/8/2019