栄養Topics【腸内細菌が産生する D 型アミノ酸の新たな腎臓保護効果を発見】

2018年12月07日(金)

【腸内細菌が産生する D 型アミノ酸の新たな腎臓保護効果を発見】

金沢大学、岡山大学、北里大学などの共同研究グループは、生命維持のさまざまな局面において重要な生理機能を有する可能性のあるD-アミノ酸が、腎臓と腸内細菌において産生されることと、腎臓の保護効果を担っていることを明らかにしました。

D-アミノ酸は、長らくその産生場所や機能などが不明でした。

 

研究では腎臓病に伴い腸内細菌叢が変化すること、少なくとも腎臓病に関連するD-アミノ酸の主たる産生部位は腸内細菌叢であること、およびD-アミノ酸を介して腎臓保護効果を示すことなどを明らかにしました。

 

 

<研究のステップ>
1.
通常マウスに急性腎障害処置を行い、腸内細菌叢が変化するかを確認しました。その結果、特定の腸内細菌が変化することが確認できました。さらに、腸内細菌を持たない無菌マウスに急性腎障害処置を行うと、通常マウスに比べ、腎障害がより悪くなりました。
このことから、腎障害に伴って腸内細菌叢が変化し、腎臓に対して何らかの保護的な因子が腸内細菌から産生されていることが示唆されます。

 

2.
腸内細菌が原因の腎臓病に関連する因子を同定するために、キラルアミノ酸網羅解析を行いました。通常マウスの腸内細菌からは、さまざまな種類のD-アミノ酸が検出されますが、腎臓ではD-セリンのみ検出されました。この結果、Dセリンは腎障害を起こしたマウスの腸内細菌から産生され、血液を介して腎臓へ到達することが分かりました。
また、無菌マウスの腸内容物からはD-セリンが検出されないことから、腸内細菌が腎障害に反応して産生していることが分かりました。
このことから、障害後の腎臓では、腸内細菌由来D-セリンに加えて腎臓によるD-セリンの合成により腎臓内のDセリン濃度が上昇することも明らかになりました。

 

3.
腸内細菌由来Dセリンの腎臓への作用を調べるために、飲水にD-セリンを溶かして通常マウスに投与しました。D-セリンを投与したマウスは、投与していないマウスに比べて、急性腎障害処置後の障害が軽度であることが分かりました。
このことから、D-セリンは急性腎障害後の腎臓に対して保護的に働くことも明らかになりました。

 

本研究で得られた知見は将来、腎臓病で発症するさまざまな全身疾患の成り立ちの理解を深めることにつながるとともに、D-アミノ酸を標的とした新規の腎臓病に対するバイオマーカーや治療薬開発へ活用されることが期待できるとしています。

 

 

■詳しくは下記サイトへ
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6237464/